長良川の戦い。
桶狭間の戦い。
川中島の戦い。

各地で大きな戦があった。

川中島の戦いでは、上杉軍も武田軍も共に大ダメージを受けたが、結局、まだ決着はついていない...。

━━春日山女学院天守。
一実は好物の、ぬれせんべいを食べながら、今後について考えていた。

(信濃は真夏に制圧されつつあるし、まだまだ色々と問題があるわね...。)

「一実様。」
と、かりんが声をかけてきた。

「かりんちゃん、どうしたの?」
一実が、かりんを見た。

「ご親戚の、上杉麗乃(うえすぎ・れの)様がいらしてます。」
と、かりんが答えた。

「有難う、通して。」
と、一実は言った。

「かしこまりました。」
と言って、かりんは天守を出ていった。

━━しばらくして、かりんは一人の美少女を連れて戻って来た。

武蔵(むさし)地区川越(かわごえ)女学園三年、上杉麗乃である。
本来、麗乃は神奈川県の東部の相模(さがみ)東部を治めていた大名である。
その後、武蔵まで支配下に置いて、一時期は関東の最大勢力になっていた。
更に麗乃は、将軍足利小百合より、《関東管領(かんとうかんれい)》という役職を任されていた。
関東管領とは、将軍の代わりに関東の治安維持を任された、権威ある役職である。

━━ただ、もはや関東管領の権威さえも意味を持たない程、関東を含めて全国的に乱れてしまっていた...。

更に、相模地区西部から、巨大な力が麗乃を圧迫して来ていたのだ。

相模地区西部小田原(おだわら)女子高等学校二年生、北条飛鳥(ほうじょう・あすか)である。
北条飛鳥は、黒髪ロングのストレートが良く似合う小柄な美少女だ。
更に頭の大きさが小さく、この時代の全女子高生の中で《最小》と言われるくらい小さい。
お粥のような、本人曰く《ベチョベチョ》のご飯を好んで食べる。

━━以前、当時大名だった姉の北条日奈子(ほうじょう・ひなこ)や家臣達と食事をした時に、飛鳥はお茶漬けを食べていたのだが、味が濃かったのか、途中でお湯を足した。
それを見た日奈子は、食事の後、家臣の女生徒に、
「いつも食べてるお茶漬けなのに、一回で丁度良い量のお湯を入れられないなんて...。
飛鳥じゃ不安だなぁ...。
北条は私の代で終わるかもね...。」
と、こぼしていた。

そんな日奈子であったが、体調を崩してしまい、大名を続けるのが難しくなったので、飛鳥に大名の座を譲ったのだ。

ちなみに北条日奈子は、肩までの茶髪セミロングのストレートが良く似合う美少女だ。
──可愛らしい顔に似合わず、怪力の持ち主でフライパンを曲げる事が出来る。

しかし、日奈子の予想を良い意味で裏切った飛鳥は、相模西部から東部まで、相模地区ほぼ全域を制圧し、更に武蔵の一部まで勢力を拡大させた。

北条家は五人姉妹で、飛鳥は四女であるが、姉妹の中で一番勢力を拡大させたのは、実は飛鳥である。
ついには、相模東部の上杉麗乃を武蔵の川越女学園まで追いやった...。

その為、麗乃は川越女学園の大名になったのである。


「麗乃ちゃん、お久し振り。」
と、一実が言った。

「一実ちゃん、お久し振り。」
と、麗乃も答えた。

「どうしたの?」
と、一実が訊く。

「──実は、一実ちゃんに関東管領を引き受けて欲しくて来たの。」
と、麗乃は言った。

「!?」
一実は、目を丸くした。

「━━上杉の名を残していく為にも、一実ちゃんに引き受けて欲しい...。
関東管領と上杉の名を残したい...。」
と、麗乃は言った。

「......。」
一実は、しばらく考えてから、
「━━分かった、引き受けるわ。」
と答えた。

「有難う。」
と、麗乃が笑顔になる。

そして麗乃は、春日山女学院を後にした。

すぐに将軍である小百合に、関東管領を上杉一実に譲る旨をメールで知らせた。

しばらくして、
『了解しました。
今までお疲れ様でした。』
と、小百合から返信があった。

━━後日、神奈川県鎌倉市にある鶴岡八幡宮(つるおかはちまんぐう)にて、関東管領職の譲渡式が行われた。
鎌倉周辺の一部は、まだ麗乃の領土であった。

そしてここに、関東管領上杉一実が誕生した...。