もう、終わりだよ。と嘘をついて、僕を腕の中から離さない。
こんなにもあからさまだと、少し興ざめする。
でも、滅多にない機会なので、僕も逃さないようにする。
世界一かわいい、その顔に、触れる。
もう二度と触れられなくても、後悔しないように。
まばたきをするのも惜しみながら、大切に、大切に触れる。
やがて君は僕に、もっと触れるように命じる。
まるで、僕の意志でそうしているように錯覚させながら。
僕の意志なんて、君の前では、全く無関係なのに。
それでも、この空間で僕が行うことは全て、僕の意志で、僕がしていることになる。
なんていう、自分勝手で、そつのない君。
そんな君も好き。
でも、僕に抱かれる時は、さんざん。さんざん。
えっちしちゃダメ。ダメ。ダメ。と言う。
もう、わかったから…。って言いたくなる程。
君の方が誘ったのに。
触れられるだけで熱くなる、その手で。
言葉にはしない、あからさまな心で。
その、世界一かわいい顔で。
君が、僕を、盲目的に誘惑したのに。
その技を使われると、僕の方から誘っているような関係にされる。
そして、僕の愛撫が進むと、やがて耳元で囁く。
「えっちしてもらっても、いいですか?」
君の言い回しは、僕を内部から震え上がらせる。
君にとって抱かれるってことは、君の中に入れるってことなんだな、と思う。
そして気づくと、性欲まる出しのふたりがそこにいる。
あとは、本能のおもむくままに。
僕が拒絶するわけない、という自信。
最後まで、僕の意志だという、錯覚。
それは、全て、君の技。
完敗。
君には、正に、完敗だ。
もう、やめよう。
それでも、君が、僕を欲しがっているわけじゃないことに。
僕はもう、気づいてしまった。
気づいてしまったのだから。
そう。