顔が思わずにやけてしまい、それを隠すかのように足早に廊下を過ぎるわたしは、端から見ればさぞかし不審人物だろう。


すれ違う生徒達は結構な確率でわたしを避ける。


友達だって、わたしに気づいて声をかけようとしても、顔をひきつらせ言葉をなくす。


しかしそんなことを気にする暇なんて、わたしにはないわ!


今は!

一にダーリン!二にダーリン!三にダーリンよ!


うわ!恋してるって感じ!いいねいいね!


…って…。


本鈴の音と共に深瀬くんが到着した場所は、定番中の定番、学校の屋上。

の、手前。


え?ここに来ても、残念ながらこの学校は屋上なんて立ち入り禁止で、年に一度の写真撮影以外は誰も…
 

「──」


…嘘。


立ち入り禁止のロープを華麗にスルーした深瀬くん。


そこには鍵がかかったドア。問題なのはそのドアの横にある窓。

窓にも同じく鍵がかかっているかと思いきや、深瀬くんはいとも簡単に窓を開けて屋上に出ていってしまった。