「あ゛?」


後ろから声がし振り返ると、さっきまでとは違い、どことなく明るい雰囲気の逢川が。

俺を見つけ、機嫌がよさそうに隣に座る。

俺はすぐにまた河原の方へ視線を戻した。


「良かったー!すぐ見つかって!」

「何しに来たんだよ」

「何しにって……普通あの場でわたしを置いていく?ひどいじゃないの」

「は?」


どういう意味だ?何が言いてぇんだよ。


「あそこはあのままわたしを連れ去る場面でしょ?それを目も合わせず一人で行っちゃうなんて…」

「んなもん知らねぇよ」

「…ま、仕方ないか。深瀬くんだしね」

「どういう意味だコラ」

「あ。手、大丈夫?」

「手?」

「ケガ、してない?」

「知らね」

「知らねって、自分の手でしょう」

「んなことよりお前は自分の心配してろよ。ケガまみれで目もあてられねぇ」


人の心配してる場合じゃねぇだろうが。あほ。


「深瀬くんの顔だって、いつのかわからないケンカの痕だらけじゃない」

「俺はどうでもいいんだよ」

「せっかくの超然イケメンがもったいないですよ」

「だからどうでもいいんだよ、俺のことは。ほっとけ」

「放っておけるわけないでしょ?逢川咲良は深瀬圭悟くんが好きって設定なんだから」

「…設定ってなんだよ」


そういや好きでもなんでもないとか言ってたな。やっぱ今までのは嘘だったんだな。


…嘘…。

嘘で俺の為にここまでできるか?

つーか何の為にこんな嘘をつく必要があったんだよ。


こいつ、どういうつもりで…