まるで人形のように、無感情で無表情。

そんな顔で逢川は言い放つ。


──こいつ、自分でも自分の立場、しっかりわかってんじゃねぇか。


「…マジで言ってんのか?」

「この状況で嘘つくほど馬鹿には見えねぇけどな」

「こいつの言うことが本当なら、とんだ無駄足だ」

「深瀬にダメージ食らわせなきゃ意味ねぇからな」


そうだ、無駄足も無駄足だ。

んなことしたって、俺にダメージなんか食らわせられねぇよ。


「菊池の野郎、落とし前つけねぇとな」

「しっかりシメてやっか」

「…の前に」


お、手を離したな。

結構素直な奴らじゃねぇか。


「人違いで悪かったな」

「このこと、誰にも言うなよ」

「俺らに殴られただの蹴られただのな」

「特にサツとか、先公とかな」


──。


「なっ、なにする…」


あいつら…っ!!


一人が逢川を羽交い締めにし、もう一人が吸っていた煙草を逢川の顔に近づけた。


そしてもう一人は携帯を取り出し逢川に向ける。