「──」


部屋を出る直前、母親の言葉にまた足を止め振り返ってしまった。


「…怒られちゃうかな。あなたはわたしよりあの子が大事だったものね。わたしより、あの、子が…」

「圭悟様、どうぞこちらへ」


一人呟く母親の様子が気になり、庄司の言葉が耳に入らなかった。


というか、目が離せなかった。みるみるうちに部屋の雰囲気が変わっていく。


…──っ!


「なんで!!どうしてよ!!どうして愛し合ってたわたしよりあんな捨て子が大事なのよ!!どうして死ぬ前にあの子なんか心配するのよ!!どうしてわたしじゃないのよ!!赤の他人の汚い犯罪者なんかどうして助けるのよ!!わたしとあの子を残して逝かないでよ!!」


──。


「圭悟様!!」

「──」


庄司に叫ばれはっとする。


急いで部屋から出てドアを閉めた。呼吸が荒くなる。


足早に外へ向かう庄司の後を、同じスピードでついていく。


車に乗り込み発進すると、重い空気の中、庄司は口を開いた。