「相田さんってザルですよね」

あたしの飲みっぷりに大島リーダーがやっぱり…と言った雰囲気の視線で見てくる。


「嗜む程度です」

「嗜む程度って」


智樹が呆れたように言う。


「なにか?」

「なんでも」


メニューから顔を上げた智樹は料理を注文する。
ポーカーフェイスが上手くて何を考えてるのか読めない。


「栄さんはほんとに年末年始帰らないんですか」

「もうチケット取れないだろ」

「彼女さんは何も言わないんですか」

「あぁ、そういうやつじゃないから」


話題、変わらず。
ターゲットが智樹になった。
今度はあたしは素知らぬ顔をする番。


「言えないだけかもしれないですよ、ね」

「え。あ、そうだよね」


大島リーダーがこっちに同意を求めてきたため、あたしはドキッとしながら返事をした。


「栄さんの彼女さんはどんな人なんですか」

「んー…。一人にしておけないヤツ」


こんなこと初めて聞いた。
あたしはおかわりのグラスを置いて、智樹と大島リーダーの会話を聞く。


「そう言って一人にしてるんじゃないですか」

「何も言わないから頭にきて」


大島リーダーが大笑いした。


「栄さんも案外、子どもっぽいとこあるんですね」


智樹は照れ隠しでビールを煽る。


「でもさぁ。実際、言わなきゃわかんないだろ。なんか、一人で抱えて。ほんとかわいくない」

「まぁ、そうですけどねぇ」


大島リーダーが智樹の言葉に頷く。
…たしかに。
何も言わないけど。
自分がかわいくないことなんて、わかってるし。
(昔から言われてきたし)


そう思いつつ、なんだか嬉しくて。
顔がニヤけそうになる。
あたしはこのまま素知らぬ顔を続けられないと思い、お手洗いへ立った。