誤り婚−こんなはずじゃなかった!−



 弟や親友と再会できるのは嬉しいし、願ってもいない事態だが、そこに行き着くまでの経緯を知らされないままなのは引っかかる。

 しかし、あいなが尋ねても、ルイスはそれについて何も答えなかった。

「詳しいことは、その時わかりますよ」

「ルイスさん……?」

「シャル様に対しご不満が解消されないようでしたら、私がシャル様に代わり、あいな様のお相手になって差し上げましょうか?」

「ほぇっ?」

 それまでと違うルイスの真剣な表情に、あいなはドキリとし、固まってしまう。執事ではなく、今の彼の顔つきは男性のそれだった。

 異性からそんなまなざしで見つめられたことのないあいなが言葉を失ってしまうのは仕方がない。

「――なんて、冗談が過ぎました。さきほどからかいを受けたお返しですよ。それでは」

「――なーんだ!冗談ですよね、わかってますよっ」

 ルイスの気配が扉の向こうへ遠くなるのを確認し、あいなは声をあげて笑った。

「ルイスさんも、真面目そうな雰囲気のクセに言うねー!次はもっとからかっちゃおうかな。面白そうだし!あ、でも、やりすぎはほどほどにしとこ。ルイスさんて、親切だけど何考えてるのかイマイチつかめないとこあるしなー……」