「王子、窓から外へ」

凛音が声を落として言う。

「両陛下と姉上を助け出さねば!!」

「女王陛下には龍神の御加護がございます。王陛下もお側にいらっしゃいます。桔梗さまには騎士団がついております。『王子を無事に連れ出せ』両陛下の命にございます」

凛音は強引に俺の手を引き、窓を開けた。

カーテンが風になびき、闇の中に白いバルコニーが浮かび上がっている。

下を覗き込み、凛音は「ここから」と声を震わせた。

俺は素早くカーテンを引き外し、剣で縦に裂き、裾とてっぺんを結んでいく。

「おい、震えている場合か。手伝え」

凛音は慌てて手を動かした。

結んで伸ばしたカーテンの端をバルコニーにくくりつけ、凛音を呼んだ。

「下りるぞ。もたもたするな」

凛音の体と自分の体を騎士服の腰紐で結わえ、カーテン伝いに階下へ下り、バルコニーの柱から伸びたカーテンを剣で切り落とした。