「その口ぶりですと、まだ何かなさるおつもりで」

「朱雀に呪詛がなされておったのだ。アムリタが無事な訳がなかろう。式神を送ってはあるが心もとない」

「なりませぬ!! なりませぬぞ」

ハーン殿は俺の肩を掴み、声を荒げた。

「今宵は二十三夜。朔が近いゆえ、体力も気も衰えておる。そう声を荒げずとも、力は使わぬ……使えぬと言うべきか」

「賢明なご判断にございます。おみ足の具合はいかがですかな」

「鉛のようだ。松葉杖無しでは立ち上がることもままならぬ」

「──あの薬の後遺症が」

「自分自身で選んだこと、其方を責めておるのではない。だが、湯治行脚に同行した者たちに負担を掛けるのが、申し訳ない……それに、公務に差し支える」

「何が起こっても……と申し上げたはずです」