「み、三上くん‥‥?」

俺は知らないうちに、帰ろうとした朝山さんに思いっきり倒れ込み、押し倒した。

「朝山さん‥‥」

俺は言いたい言葉が喉の近くにいるのに、なぜか出てこない。

「なんですか?」

俺は多分顔が真っ赤だと思う。それぐらい顔が熱かった。彼女は俺の異変に気づいて本当に優しい声で「なんですか」なんて聞いてくる。

「朝山さんは‥‥好きな人いますか?」

なに回りくどいこといってんの!俺。

「‥‥い、いますよ。」

彼女も顔を赤らめながらそう言った。本当は「いないですよっ!」なんて言葉を期待した。

「じゃあ嘘ついてたの?」

「え‥‥」

「さっき好きな人出来るかはわからないって言ってた癖に」

「それはね、諦めたんですよ。」

彼女は悲しそうな顔をする。でも、なんだか爽やかな顔をしている。

「好きな人が幸せになったら幸せじゃないですか?」

呆れた。どれだけ朝山さんはお人好しなわけ‥‥。

「はぁ‥‥それだから朝山さん、鈍感なんて言われるんだよ。」

どーせ、俺が今からすることなんてなにも考えてないでしょ。