「別に教えたくなけりゃ答えなくていい。‥‥もし、答えてくれるなら教えて欲しい。

‥‥泣くほど嫌なことあったのか?」

セイさんは私の髪の毛をいじりながらそう言う。その言葉にどう答えたらいいのか分からなかった。

「‥‥悪かった。こんな話をして」

「い、いえ‥‥ただ、言葉が出てこないんです。」

「‥‥?」

「今日、学校に戻った後、一つの噂を聞いちゃったんです。」

「噂?」

「‥‥三上くんに彼女さんがいるかもしれないと」

「アイツに?」

「はい‥‥。そしたら、そこに居たくなくなって、走って逃げちゃったんです。」

「‥‥なるほどな。自分はただの"言葉の彼女"とかでも思ったんだろお前」

「‥‥!」

"言葉の彼女"確かにそうだった。契約で彼女という"言葉"になっただけ。愛なんて二人の間には一つもない。

「別に三上くんのこと好きではないんですけど‥‥どうしてですかね‥‥

少し寂しいんですよ‥‥」

私はまた視界がぼやける。

「ったく、めんどくせー女だな。‥‥それが好きじゃないんならなんなんだって話だ。きっとお前はもう

"言葉だけの彼氏"なんて思ってねーんじゃねーの?」

「そ、そんなことは‥‥」

「琴。お前が抱いた感情は嫉妬だ。それじゃなきゃ泣く理由もないだろ。せっかくメイクしてやったんだ。その腫れた目どうにかしろよな。」

そう言って、髪の毛をいじり終わったのか仕事へと戻っていくセイさん。口は良くないけど、言ってることは正論だと思う。

前に彼に向かって"寂しがり屋のウサギさん"と言ったけど‥‥




「実は私なんだよね‥‥。」