「……沙耶?」


私はいつの間にか泣き止んでいた。

あの頃に比べて、すごく大人になった隆也。

私を抱きしめる腕はゴツゴツしてガッシリと私を離さない。

いつから洒落だしたのか覚えていないけれど、首からぶら下げているシルバーのネックレスにふんわり香る香水の匂い。

それでも隆也の匂いがする。

あの、砂場での隆也の匂い。


「もう大丈夫だよ」


そう言うと隆也の腕はフッと力を緩める。

隆也と目が合うと隆也は泣いていた。


「なんで泣いてるの」


私が聞くと隆也は私の目尻に指を這わせて涙を拭き取る。


「ホントに大丈夫か?」


涙を流しながら私に聞く隆也。

大人になってしまったと思っていたけれど全然そんなことなかった。

砂場で私を守ってくれた、いつも威張っているけれど本当は臆病で優しい隆也のままだった。


「大丈夫だよ」


私は、隆也の私への気持ちを確信する。


けれど私はその気持ちに答えることはできない。


隆也は私の気持ちを知っているからきっと、何も言ってこない。

言えないから、こうして態度で示してくる。

私を抱きしめたり、頭を撫でたり、スキンシップをとってくる。


私は、そんな幼なじみの隆也との関係が心地よい。



とても、心地よい。