いや実際、嘘なのかもしれない。
未来があたしを元気付けようとしてくれた優しい嘘かもしれない。
苦しい。
海に身を投げたみたいに息ができなくて、呼吸ができなくなりそう。
やっぱり来るんじゃなかった。
帰ってテツがいない部屋に置いてくればよかった。
今からでも間に合うからそうしよ。
「あ!あの子、鉄也の嫁じゃない?」
「お、ほんとだ。澪ちゃ~ん」
2人に背を向けた瞬間に気付かれてしまった。
走り出そうとした足が止まる。
呼ばれてしまったからもう走れない。
振り返ると、向坂先輩が笑顔であたしの方に駆け寄ってきた。
"鉄也の嫁"、向坂先輩からそう言われてチクリと胸が痛む。
まるで"あんたが嫁なわけないでしょ?"と言われているようで呼吸が苦しくなる。
いつかテツと向坂先輩が付き合って、"こいつ、俺の嫁"と言われるのがあたしじゃなくて向坂先輩になるんだと思うと心のポッカリと穴が開いたように虚無感が襲う。



