澪が上げたボールはとても練習になりそうになくて、しかもバレーを馬鹿にしたようなそれに気づけば澪を怒鳴っていた。




「バレーをバカにしてんなら、俺にボールを上げるなんて二度と口にすんな…!」




澪は一瞬泣きそうな顔をして走り去っていった。
最初は言い過ぎたと思ったけど、これで邪魔者がいなくなると思えばそんな気持ちどこかにいってしまった。





でもそれからしばらくして澪が自主練している俺の前にやってきた。




「もう一度てっちゃんにボールを上げたい!」って真剣な表情をして。




その目つきに断れずにもう一度上げてもらったら、比べ物にならないほど上達していた。





また上げてほしい、そう思わせるトスだった。




あとからお袋に聞けば、澪は俺に試合のビデオを見ては必死にトスの練習をしていたと。




泣いて謝ってくると思っていたのに、くじけずに練習してきた澪。
俺にトスを上げたら満足したのか眠ってしまった澪の指には潰れたマメがいくつもあった。




それを見て俺はいつの間にか澪のことを"近所のガキ"から"守ってやりたい大切な子"へと気持ちが変化していった。