あたしは首を横に振った。
するといきなり麗さんに両方の頬を手で包まれた。
「鉄也を応援するのは澪ちゃんらしいけど、何でもかんでも鉄也を優先するのはよくないよ!
鉄也ばかりを優先して、澪ちゃんの気持ちを犠牲にすることなんかない。
澪ちゃんには澪ちゃんの意思があるんだから」
「で、でもあたしの気持ちを伝えたところでテツの荷物になるだけじゃ……」
あたしのほんとの気持ちを伝えたところでテツには邪魔になるだけ。
テツの邪魔になるくらいならあたしが我慢すればいい話。
麗さんはあたしの頬から手を離し、眉をハの字にして困ったように笑った。
「…私もね?最初剣ちゃんが宮古大に行くって言われた時、澪ちゃんと同じこと考えた。
私がワガママ言うわけにはいかない、剣ちゃんには剣ちゃんの行きたい道があるんだからって。
でも剣ちゃんに言われたよ。『俺には俺の道があるように、麗にも麗の道があるだろ?だから言いたいこと言えばいい』って。
それ聞いてあぁ言ってもいいんだって何だか安心したの。
そこからすぐ言いたいこと泣きながらたくさん言ったよ」
もう化粧がボロボロに落ちちゃうくらいにね。
麗さんはその時のことを思い出してるかのように遠くを見るような目をしていた。
知らなかった。
麗さんは言いたいことは何でもすぐに言いそうなのに、あたしと同じように我慢してたんだ。
「鉄也は剣ちゃんみたいに言わないと思うけど、きっと澪ちゃんが思ってること聞きたいと思ってるはずだよ。
澪ちゃんが言ったところで鉄也の意志は変わらないかもしれないけど、でも鉄也はきっと受け止めてくれるよ。
受け止めてくれなかったら私が鉄也殴ってやるからさ!
それに澪ちゃん前に私に言ってくれたよね?『我慢なんてしないで下さい。寂しいけど泣いちゃいけないことなんてないんですから』って。
自分の思い伝えて泣きたくなったら泣いていいんだからね?
鉄也の前でどーんと泣いて困らせてやれ!」
「…っうらら、さん~……っ」
「あーもー、今泣いてどうすんの全く」
麗さんはため息をつきながらも涙が止まらないあたしを優しく抱き締めてくれた。



