水で濡れているせいでいつも癖のついてる髪がストレートになってテツの顔を覆ってる。
その姿を見るだけで涙が溢れそうになる。
でも泣くもんか。
誰よりも悔しくて泣きたい人が目の前にいるのに、あたしが泣いてどうすんだ。
「…テツ」
名前を呼んで近付けばテツは蛇口を捻って水を止めた。
濡れた髪をタオルに包み込んで優しく拭く。
テツはされるがまま動こうとしない。
顔も俯いたまま、言葉も何も言わない。
それでもあたしはテツの頭を拭くのをやめない。
「…テツ、6年間お疲れ様。
今日のテツ、今まででいっっっちばん輝いてて、いっっっちばん高く綺麗に跳んでた……!
……ねぇ、今はここにあたししかいないから我慢しなくていいよ」
だからおいで、テツ。
「……っ」
そのまま倒れそうな勢いで抱きつかれた。
力を抜くように膝を折って体制を崩してもそれでもあたしを抱き締める腕を緩めないテツに合わせて膝を折る。
声を押し殺しているテツは泣いているか分からない。
でも震える体がすべてを物語っている。
大きな舞台でテツの活躍を色んな人に見せられなかったのは悔しい。
テツはもっと大きな舞台で跳べるくらいの実力があるんだから。
でもきっと桃子ちゃんがテツを見ていたみたいに、テツの頑張りを必ず見てくれている人がいるから。
もし誰も見ていなかったとしてもあたしがいる。
テツの今までの努力は無駄じゃないと、あたしが証明するよ。
だから今は思う存分悔しがればいい。



