「…もうほんっとに、信じらんない…っ!」


「あ?まだ言ってんのかよ」




帰り道。
あたしはただ今テツにおんぶをされている。




なぜって?
テツがあんな風に甘いキスをしてくるから腰を抜かしてしまったため。




しかも観覧車から降りる直前まで止めないから、キャストの人にも絶対見られたし!




そして止めのこの腰を抜かすという仕打ち。




また行きたいなんて呑気なこと考えてたけど、もう行けない。




"この前めっちゃキスしてたカップルだ"とか思われるのやだし!




「でも腰抜かすってことは、よかったってことだろ?」


「黙れバカテツ」




これ以上あのことを思い出させないで。




あぁもう風になってどこかに行ってしまいたい。




すると風が吹いて、あたしの手首についたブレスレットを揺する。




きっと風になったってこの手錠(ブレスレット)がある限り、あたしはテツから逃れられない。




ううん。風になんかならなくていいや。




だって風になったらずっとテツの傍にいられないし何より…




「あ?んだよ、いきなり強く抱きついてきて」


「んー?別に!」




こうやってテツに触れられなくなっちゃうから。
そんなの嫌だ。




「…なに、誘ってんの?
可愛い可愛い澪ちゃんの誘いなら断れねぇな。

家帰ったら楽しみにしてろよ?」


「な!ば!違うわ!」




いきなり家に向かって走り出したテツ。
そしてあたしの部屋で映画『続・吸血島』を見させられるのはもう少し後の話。