不安なんだね。
相手が三輪田くん達の学校ってのもあるし、そして何より先輩達と戦える最後の大会でもあるから。
先輩達に優勝という景色を見せてあげたいって、あんなに練習してたんだね。
大丈夫。
あたしがその不安を取り除くから。
しっかりとテツを背後から抱き締める。
「絶対勝って、なんてあたしは言わない。
必死に戦って勝っても、テツが怪我して大好きなバレー出来なくなる方が辛いから。
だから一人で背負おうとして無理しないで。
先輩達もしっかりとフォローしてくれる。
兼田先輩だって成宮先輩だっている。
周りを信じてテツはテツなりに跳べばいいから」
大丈夫なんて無責任なことは言わない。
あたしはテツが無理することがないように不安を取り除くことが役目だから。
テツのこの手の震えが治まるようにテツを抱き締める腕に力をいれる。
するとテツの手はしっかりとあたしの腕を掴んだ。
「…何かーちゃんみてーなこと言ってんだ」
前を向いていたテツがふっと笑った気がした。
あんたのお母さんじゃないわ。
という思いを込めて顎をテツの頭に乗せてグリグリとテツの髪を乱す。
「かーちゃんじゃなくて、あたしはテツの嫁だからね!」
「澪ちゃんも言うようになったな」
ユニフォームを着て振り返ったテツの表情はスッキリしたようだった。
そして何よりあたしの頭を撫でた手は震えてなかった。



