どんなに速足で歩いても、体格差のありすぎるためすぐテツに追いつかれてしまう。
追いつかれてしまっては逃げようがないので、ペースを落としてテツの隣を歩く。
あたしがペースを落としたことに満足したのか、テツは空いてるあたしの手を握った。
「…俺さ、今日はお袋と親父が前夜祭やってくれるんだよな」
「前夜祭?な、なんの…?」
分かってる。
絶対、テツの誕生日の前夜祭って意味だ。
ちょっとしたサプライズにしたかったから、あえて知らないフリをした。
でもテツはあたしがわざと知らないフリをしたことに気付いてる。
この嫌らしい笑顔が何よりの証拠。
「明日は楽しみだなー。澪ちゃんお手製のケーキ」
「はぁ?誰も作るなんて言ってないし」
「なんでケーキなんか作んなきゃいけないのって言わないってことは、分かってんだろ?」
「……っ」
こいつ……!
ほんっと性格悪すぎ……っ!
そのムカつく顔を殴りたい衝動と格闘していると、手を繋いでいるテツの手に僅かに力が入った。
ふと気になって見上げると暗くなった夜空を見上げながら笑うテツがいた。
「今までの誕生日の中で一番楽しみだわ」
「……っ!」
そんなこと言われたら頑張るしかないじゃん。
「……明日、家に来てね」
言葉の招待状を出すと、テツはこっちを見て夜空に瞬く星に負けないくらいに輝く笑顔を見せた。



