原高校バレー部を乗せたバスに手を振る関ヶ峰バレー部。
バスが小さくなると三輪田は手を下ろしてため息をついた。
「…晶、ほんとはなんて言われたの?」
「………何がッスか……」
いきなり肩を組んできた古場に、三輪田はもう一度ため息をつく。
「とぼけるなよ?
黒鉄の王様、黒岡にだよ。『大会で当たったら負けねーから』なんて優しい言葉を言われた訳じゃないでしょ?」
三輪田にとって古場は異様なほどに鋭くて、得意技は盗聴という好きになれない先輩の一人だ。
正直に言わないとしつこい古場に負けて、三輪田は既に見えないがバスが去っていった方向を見つめ口を開く。
「…………『澪に手ぇだしたら、殴るだけじゃ済まさねーから覚えとけ』……って言われたッス…」
「おぉー、怖っ!
晶、殺されないようにね?」
古場は身震いをしながら去っていった。
三輪田はそんな古場を見送って、もう一度バスが通った道をしばらく見ていた。