「私だって悪いもん。あんまり謝んないで」

何年も一緒にいるのに、いつになっても倒れるタイミングを掴めないから、倒れる瞬間に支えてあげることが出来ない。

授業中椅子に座ってる時、階段を登る途中、どちらかの家で大人しくテレビゲームをしてる最中でも、バタッと倒れてしまう。

だから麻奈葉は膝や肘など、外側まで傷がついている。

透明感のある白い肌が、カサブタだらけで痛々しい。

「うん、ありがとう……あ、そうだ、真鳥」

「何なに?」

私は椅子から身を乗り出す。

「この前貸してくれた少女漫画の話なんだけど……」

麻奈葉は横にあった本棚から、一冊の漫画を出した。

タイトルは『レトロチック サーカス』。今流行りの異世界を舞台にした恋愛モノだ。

内容は、主人公の女の子が過保護過ぎる両親から、十年間自分と自分の周りのものの時間が進まない魔法をかけられてしまう。

そして女の子は外の世界を知らないまま、家の中に閉じ込められていた。女の子の両親は外出先で亡くなり、女の子は外の世界の存在すら知らない。

それから十年後、女の子の家を空き家だと思った奇術師見習いの青年が、泥棒に入る。

外の世界を何も知らない女の子を連れ出し、自身のサーカス団に入れ、異世界の旅が始まる―――といったものだ。

麻奈葉は主人公の女の子と同じようになかなか外に出られないし、室内にいる時暇にならなくていいかなと思って先月貸したんだ。