ガチャン!
「遅い」
カップが乱暴な音を立ててコースターに置かれた。
「え?」
「俺の弟子になりたいとかほざいといて、何待たせてんの?常識無い?馬鹿?」
疲れたように髪をかきあげ、じろりとこちらを睨みつける成海くん。
学校にいた時と違い『少女漫画系男子』の要素が一ミリもなく消えていた。
え……?
いきなりのキツイ態度に、私は膝に置いた拳を震わせた。
「ほら、教えてやっからちゃんと聞いとけ。最初に言っとくけど、この事は誰にも―――」
「なるほど、これが『ギャップ』なるものなのか!」
ガバッと顔を上げ、尊敬の眼差しを成海くんに送りまくる。
「は?」
「流石『少女漫画系男子』!女子のハートを掴む術を自ら演じて見せてくれるとは!優しい!」
「……お前、やっぱ馬鹿?」
本日何度目かの『馬鹿』と言われた。
「?よく言われる。『常識が無い』とか、『周りを見ない』とか。私は嘘ついたり誤魔化したりするのが苦手なだけなんだけどね」
にひっと笑う。