「はーい、皆ならんで。夢はそこな」
「パソコン、これなに」
「なんだと思う?」
「おいー!これ魂抜かれるんじゃなかったのかよ」
「それは冗談だよ」
「あっ栞騙したな!」

ガシャッ

「なにするんだろうね、ピアノ」
「さあ、思い出を残しておくんだよ。僕らはここなら存在できるから」
「ふーん」


僕の世界はここで終わる。不思議だな。悲しいけれど悔しくはないんだ。この校舎が使われなくなってもう数年は経つ。その時にもう潮時なんだと皆思っていたのだろうか。この結末のことを理解していたのだろうか。一年が一日みたいに感じて僕には何が残るんだろうと思っていた。妄想と幻の中でこれを現実だと捉える術を探していた。この世界で僕は何を得て何を残したんだろうと考えあぐねる。けど沢山、残っていたよ。
こんなに、大切なものが。

カッカッカッカッカッカッ

遠くから君が巻いたネジの音がする。もしかしたら僕の心音かもしれないな。あるいは共鳴している、なんて。それならいいのに。怖くないよ、終わることは始まることなんだ。陳腐だけど必ずそうなんだ。
忘れたくないな、今日までの思い出を。僕はそうして、意識を時の流れに任せていく。

「ありがとう」
そうしてまた、僕も壊れていくのだ。