銀髪は気絶して顔の原形がなくなった男を冷たく見下ろしながら煙草に火をつけている。ふー、と白い煙を暗い空に吐き出すと横目でチラリとあたしの顔を見た。
刺すように冷たい視線があたしへと向く。
「ってかお姉さん誰?」
「え、」
「え、じゃねえから。お姉さんさっきからずっと見ちゃってたけど、これ誰にも見られるなって優に言われてるんだよな」
「そういえばこいつ誰だよ?ジロジロ見てんじゃねぇぞ!!」
今更ながら憤慨されても困る。突然目の前で暴れ出したのはそっちじゃないか。言いがかりはよしてほしい。
あたしは静かに物思いにふけっていただけだからね。なのにそんなあり得ない事が目の前で起きれば誰だって硬直しちゃうだろうよ。
「仕方ねえな」
呆然とするあたしを刺すような視線で見つめていた銀髪は煙草を指に挟み別の手で金髪の肩を一度トンと軽く叩いた。
「翼、このお姉さん優のとこに一旦連れて行け。これ見られて返すわけにいかねえし」
「は?まじかよ?隼人嫌がんぞ。っつか空が連れて行けよ。まだ後始末終わってねえだろ」
「後始末は俺が行く。お前が行くより俺が行った方が早く終わるからな」
そう言ってひらひらと優雅に手を振った銀髪は元来た道を去っていく。
薄暗い世界へとゆっくり時間をかけて溶けて行く銀髪の背中が完全に闇に飲まれて数秒後、あたしは静かに生唾をゴクリ飲み込んだ。
未だに状況が掴めない事に静かな焦りを感じる。
