空は尚も撮影しようと、持っていたスマホをまたこちらに構えてきた。それを見て慌ててババババと翼の手を払いベッドから降りる。あたしが飛び降りた反動もあって、ベッドが大きく揺れると翼もさすがに目を覚ましたらしく身動ぎしながらも目元を擦り上半身をゆっくりと起こした。



表情は非難めいたそれだったけど。



「いって…お前どんだけ寝相わる…っ!」



ゆっくりと瞳を開けた所で自分の兄貴が扉の前でスマホを構えている事に気づいたらしい。寝ぼけ眼から目を見開き硬直した。



「いんやーびっくりだね。おはよー翼?昨日はお姉さんと熱い夜を過ごしたみてえじゃねえか」


「お前っ、いつからそこに」


「ああ、安心しろ安心しろ。別に覗いちゃいねえから。お姉さんが居るなんて思わねえで今さっき気付いた所だ。びっくりしたわー部屋のドア開けたらお前とお姉さんが一緒に仲良く寝てるんだもんな」




それを聞いて何だか顔が熱くなる。もっと違う言い方は出来ないのか。過ちは過ちでもそういう過ちじゃないって言ってるのに。




最悪だ。せめて空より早く起きるべきだった。絶対しばらくこれをネタに脅してくるに違いない。




これ以上、話を大きくされては敵わない。あたしは慌てて早足で翼のいた部屋から廊下へと飛び出した。



廊下へと出る間際、空はやっぱり楽しげにニヤニヤとした悪い笑みをあたしに最後向けてきた。何度言えば分かるんだ!そそ、そんなやましい事一切、そう一切何もしてないんだからな!



黒いソファーにテレビだけが置いてあるシンプルなリビングに滑り込む。寝ぼけていたとは言え、部屋を間違えたあたしのミスだ。仲良く…なんて言われたらやけに恥ずかしくなってきたぞ。