あたしの頭を撫でていたその手も、いつの間にかあたしの頭に乗っかったまま停止してて。



そんなに疲れていたんだろうか。



珍しく静かな翼は貴重だな、伏せた睫毛は意外にも長い。眠っている姿は何故だか妙に可愛らしく見えてきた。黙っていれば可愛いじゃないか黙っていれーーーーっ、カシャッ!とふいにシャッター音。



「ほおーへえー。みーっちゃったみーっちゃったあー」



上半身をゆっくりと中途半端に起こし、音のした方へと顔を上げてみる。部屋の扉がいつの間にか開いていた。扉に寄りかかるようにしてニヤニヤと笑っている男は朝っぱらからその妖艶さを惜しみ無く放つ空だった。



楽しげにニヤニヤと笑いながらも銀色の髪をゆっくりと指先で片耳へとかける。その妖艶さ、どうやったら出せるんだろうね。あたしには無いものだから少々気になる。女のあたしより色っぽいって本当、罪。



けれど空の色っぽさよりも気になる点が。それは空がこちらに向けて構えているスマホ。



「お兄さんお兄さん、それはいったい何をしてらっしゃるんですか?」


「いやいやあー兄ちゃんびっくりだわー。まっさか我が弟がこーんな大胆な事しちゃってるなんてねえ。いやー知らなかった知らなかった」


「い、いやいやちょっ、何の話でしょうか」



空はニヤニヤとした笑みを崩す事無く、細い指先であたしの真後ろを指さした。その先を辿ってみると腰に温かい手がタイミングを測ったように回る。ハっとして振り返れば翼が「んっ、」甘えるようにあたしを抱きしめるようにして眠っていた。



ちょっ、これはっ!




「もしかしてお2人ってそーいう関係だったのぉ?いつの間にー?やだーもう、何で兄ちゃんに言ってくれないの?秘密なんて酷いじゃねえか」


「ちちちち!!違うぞ!これは違うんだ、聞いてくれこれはちょっとしたミスと言いますか」


「あーあるよねえ、一夜の過ちみたいな感じ。俺も経験した事あるからよぉーく分かる」


「そうじゃない!何か誤解してる!」