「ねえ寝るのはいいけどそっち向いてよ!何でこっちに向いて寝るのさ。見られながら寝ると寝にくいんだけど」
なぜかあたしの方に体を向けて寝てくる翼。朝起きた時もその体勢だったからバッチリ目が合っちゃったんじゃないか。せめて背中を向けるとかさ、そういう体勢をとろうよ。
「うるせえな。お前に背中向けると刺し殺されそうで嫌なんだよ」
「そんな事しないよ!人を殺人者扱いとかやめてくれ物騒な!」
「そうだな間違ったわ。首絞められるの間違いだ」
起きたばっかりなのに良くもまあ、こんなに憎まれ口がでるもんだと感心したくなるわ。口では適わないので変わりに目を閉じた翼の顔面に手をべチっと振り下ろした。
「いってッ!何すんだよ!」
「そっちが失礼な事言うからだろ!」
「結局叩いてんだから暴力振るう事には変わりなかったじゃねえかよ!もっと女らしく出来ねえのか」
「生憎あたしはそんな育てかたされてない!」
「威張る所じゃねえだろ」
ギロリと睨んだ翼にべーっと舌をつきだしてやった。そんなあたしを見て翼はまたもや嘆息気味みに言う。
「お前もっと色々自覚しろ。」
「…色々とは?」
「色々は色々だよ、本当救いようのねえ馬鹿だな」
「おい待てお前には言われたくないぞ。馬鹿では無い」
それについての返事は「あぁーはいはいはいはいはいはい」物凄く適当なもので、色々と物申したいのだが。
翼は何度かあたしの頭をペチンペチンと叩いた後、眠くなってきたのか今度は優しく数回頭を撫でてくる。さすがにそれには硬直した。だってあまりにも優しく撫でるものだから反応に困る。
これは何かの罠か?この数秒後「なーんてな馬鹿め!」チョップが振り落とされるんじゃなかろうか!ハっとして身構えようとして止めた。だって既に翼は寝息を立てていたから。