「確かに、あれは誘っているようにしか見えなかったからねー」


「バカ女も一応女だったっつー事だな」


「そんな事言ってるけどつーちんが一番動揺してたじゃん。」


「はあ!?動揺なんてするわけねえだろこの俺が。っつか女苦手だったくせになんでお前が一番動揺してねーんだよ!」


「愛愛は別だって言ったじゃん」



えへへーなんて言いそうな満面の笑顔を浮かべながらも隼人さんが愛理さんの頭を撫で続ける。柔らかそうな愛理さんの髪がサラサラと音をたてていた。



「あかんほんま、何か…うん」


「あれれー優ちゃんもしかしてお姉さんに惚れちゃったのかなあ?」


「おいまじかよ。お前まじで眼科行けって!俺が良いところ紹介してやっから」


「むしろお前が眼科行けや」


「何でだよ!」


「何でって…」




怒鳴る翼さんに呆れたような表情をした優さんが愛理さんの前髪を払い、視線で愛理さんを指す。促されるようにして愛理さんに視線を止めた翼さんは数秒はそこに視線を止めたものの、すぐに逸らして口を曲げる。



自分の表情を誤魔化すように「この女のどこがいいんだよ」力無い言葉を吐いた。



「優ちゃん今からそんな調子で大丈夫なんか?お姉さんと二人っきりで暮らしていくんだぞこれから。ダメなら今のうちに追い出した方がいいんじゃねえの?」


「俺は拾った子を途中で手放したりせんもん」


「優ちんがそんな事しようとしてたら俺が怒ってるよ。愛愛はたぶん…あいつとはちげえもん」


「隼人」


「あ、悪い」


「いや、ええねん。気にしてへんから。そうやなあー、うん、隼人の言う通り愛理ちゃんは違うとええなって思ってる」




言う優さんの表情は切ないとも嬉しいとも、どちらにも取れる難しい表情だ。けれどふいに苦笑すると口を曲げて言う。