「愛愛、飲みすぎたのか?平気か?」


すぐ横から隼人くんの声がする。双子とは打って変わって本当に心配そうな声色だ。申し訳ない、大丈夫だ。水を飲めばきっとすぐなおるから。




「おら、バカ女!キャップ開けてやったから飲めや」



今まで散々トシの事をいじっていた癖に飽きでもしたのか、翼がしゃがんであたしの口元にぐいっとペットボトルを押し当ててきた。言葉の通りキャップは外れていたものの、押し付ける力が強くて唇が痛い痛い。




「お前な、もっと優しく出来ひんの?」


「はあ?出来るわけねえだろこいつに。むしろ有り難く思えっつの!この俺が直々に飲ませてやろうとしてんだから」


「アホやろ」



優が飽きれてる。あたしも同意見だ。翼に優の優しさがほんの少しでもあれば全然違ってくるのに。



「なんなら俺が口移しで飲ませてあげてもいいけどねぇーどうするお姉さん?」



あたしの顔を覗き込むようにして空が甘い声を囁いたがやめてくれ、いつもの倍気分が悪くなるぞ。




「愛愛?大丈夫か?目開けてみなって」




よしよし、優しく頭を撫でられてかっこ悪い。本当にあたしがここで一番年上なのかと不安になってきたよ。



「うっ、…すまん皆の集」



ぐるぐると回る視界を遮断するように固く閉じていた瞳をふっと開いた。あたしに影を落とす面々の表情をそっと見上げる。まだ視界はしっかりとはしなかった。



それぞれの瞳とあたしの瞳が一瞬ずつ交差していく。


――――――と。




『うっ!!!』



呻き声のようなその声を上げて空を抜かした全員があたしから視線を逸らした。空に至っては「ほおー?」観察するようにあたしを下から上まで凝視してにやにやと楽しげだ。



いったい何なんだその反応は!うっ、だなんて失礼じゃなかろうか!



何かを言ってやろうと口を開くけれど、ダメだ、眠い。開いた瞼がどっしりと重みを増していく。それに身を委ねた所で、瞳が閉じる瞬間感じたのは大きな落ち着く腕がギュウっとあたしを抱きしめてくれる感触だった。