探るような冷えたような、その表情にぐっと言葉を一旦飲み込む。目からビームが飛んできたら困るとササ、緩く体勢を立て直し。



「別に。ただ何となくというか、勝手に出た言葉で。」


「へえ?」


「そ、そうです」


「ふーん??」



暫く視線で探られる。数秒後、「早く来い」と視線だけで呼ばれた。



おずおずと止めた足を動かし空の隣に追いつくと、今度はゆっくりあたしに歩幅をあわせてくれる。




「俺、正直びっくりなんだよねー。」


「何が?」



遅くも無く早くも無く、あたしに寄り添うように歩く空は着ていたカーディガンのポケットに一度手を突っ込み、手慣れたようにタバコのケースを取り出した。



おいおいあなた未成年でしょ。けれど咥えただけだったので指摘しようとした言葉を飲み込む。火をつけたら言ってやろう。




「優が言ってたろ。図星だったんだよ。俺、人の嘘見抜くのうまいけど自分の嘘は絶対見抜かれない自信あったんだけどね」


「…図星なの?」


「お前本当に考えて言ったわけじゃねえんだな」


「そうです」



空はあたしに心の中を読まれたと思ってるのかな。それは見当違いだ。あたしは心を読んでない。言った通り考えずに言葉が出た。別に嘘を見抜けたわけじゃない。




「お姉さん意外と大物かもね」



にやっといたずらっぽく笑った空はほら行くぞなんて言いながらあたしの手を掴んで引っ張っていく。




大物ね。それってほめ言葉なの?



「さっきの覚悟、忘れないようにな」



小さく呟いた声に返事はしなかったけど返事の変わりに不安そうに握り締めてきた手を強く握り返してあげた。



大丈夫だ。


それにもし願うなら、何か闇を持った皆の事、少しでも救ってあげられたらって思うから。