俯きながら言ったあたしにゆっくりと優が振り返ってくれた。
伸ばされた手がポンポンと頭を撫でてくれる。
「ええに決まっとるやろ」
暗い表情が嘘のようだった。優しい笑顔で笑ってくれたけどその一瞬一瞬の間に何となく「(ああ、泣きそう)」そんな風に思ってしまった。自分が泣きそうと言うよりも優が泣きそうに見えた気がした。
「空…」
オムライスにスプーンを突き刺す事をいつの間にか止めていた空を呼ぶ。止めていたのかと思ったら、もう残されていたオムライスは空っぽだった。
視線はすぐに上げられた。
「あたし覚悟ある。だから大丈夫だよ。自分の事は何とかするし、そういう事にならないように頑張るし、もしそうなっても見捨てて平気。でも絶対言わないから」
「度胸あるねお姉さん」
ハッキリ言えば暴言だとは思う。ほんの少しさげずむ言い方も含まれていたけど、空は一応その言葉に少しは納得してくれたらしい。さっきよりも少しだけ表情が柔らかい。もう目からビームは出ないようなので安心だ。
「えーまじかよ。じゃあこれから優の家に来たら毎回こいついんのか。ありえねえわ!」
「何言ってんだよつーちん!愛愛ありがとな。残ってくれて俺すげえ嬉しいよ」
「そう言ってもらえて安心した」
「良かったな。拾ってもらって」
翼がフっと口元を緩めて嘲笑う。確かに拾ってもらったようなものだから何も言い返せないけど、さっきまでの冷たい空気とは打って変わってまた温かい空気に戻ってる。
良かった。あんな空気はさすがに辛い。心臓に悪かった。
