「空、やめとけ。今のは図星やろ」



ゆっくりあたしを隠すように優があたしの前に立ってくれる。優越しにそっと空を確認すると。




「くそ…」



小さく悪態づき、荒々しく再び椅子へと腰かけた。怒りをぶつけるようにして残りのオムライスにスプーンを突き刺す。ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。赤い血みたいだ。




「なあ愛理ちゃん。今の空の話、言い方はキツかったかもしれんけど本当のことやねん。俺は愛理ちゃんの事気に入ったからここに居たいだけ居てくれって頼んだけど…ほんまはここに居たら危ない事もあるかもしれん」



優はあたしに振り向いてくれない。その背中はすごく寂しそうだった。



「やからこの事は愛理ちゃん自身が決めてほしいねん。俺が居てくれとか隼人が居てほしいとか空が出て行けとかそんなん関係なくて。愛理ちゃんの気持ちが知りたい」



優の背中にそっと手をつき、下から覗き込むように表情を窺う。それに気づくと優はクシャリと微笑んだけど下手くそな笑顔だった。ハッキリ言って笑えてない。


どうしてそんなに哀しそうなんだろう。



台所の椅子に腰かける全員、何だか少し暗い表情。何か暗い闇を持っているみたいに。



空に掴まれた手首はまだ痛い。ジンジンと痛むそこをもう片方の手で擦りながらも、こんなあたしでも何かの役に立てるだろうかと考えた。



優はあたしの好きに、そう言ってるけどあたしに行ってほしくないって言ってるって思ってもいいのかな?自惚れてるみたいだろうか。でもだって声色も言葉も引き止めているようにしか聞こえなくて。




「あたしまだ、ここに居ても、いいかな。」



よくよく考えずとも分かるおかしな状況。昨夜拾ってもらい知らな過ぎる事が沢山あるっていうのにここにまだ居座ろうとするなんて最低人間。



言って自分をぶん殴りたくなったけど、色々とここであった小さな出来事一つ一つ無視できないと思えたから。