「つーちんとそーちんこんなだけど、本当は優しいとこもあるんだよ。口汚いとこはあるけど気にすんなよ?」
「大丈夫。あたし結構撃たれ強いんだ」
「そっか、ならいいんだけど。まじ気にしないで愛愛はずっとここに居ていいんだからな」
――――――――――え?
至極真面目な表情でテーブルを叩く隼人くんがあたしに言い聞かせるように顔をずいと近づけて言う。その言葉に呆気に取られていると。
「いやいや何言ってんだお前は。いつからそんなに積極的になったんだよ」
翼はもぐもぐと噛んでいたオムライスを慌ててごっくんと飲み下し、持っていたスプーンの先を隼人くんに向けた。
「愛愛だけなんだよ。女で怖くないって思えたの。俺このままじゃ駄目だって分かってんだ。だから愛愛が居ればもしかしたら女が大丈夫になるかもしれねえじゃん」
「隼人、お前本気で言ってんの?」
いやいやそんな大袈裟な、手をぶんぶんと振り回すあたしに一瞥をくれて黙らせた空は今までふざけていた声色とは違う冷たい声で隼人くんを窘めた。
あの夜のことを思い出した。翼が人を殴り続けていた時もこんな目で見つめていたっけ。ごくん、冷たい声色と冷酷な瞳に生唾を飲み込む。何だこの雰囲気。
あたしに言い聞かせているわけじゃないのに驚いてついつい体が固まってしまった。優はチラリと空を視線で確認したけど、また何事も無かったようにオムライスに向き直ってしまった、あなた止めなくていいんですか?
翼も空の声色に少し驚いた様だけどゆっくり視線を隼人くんに向けて今は耳を傾けてる。
「本気じゃなかったら言ってねえって。俺がこんな事言ったことなかっただろ」
冷めた視線を向けられても全然怯えることなく涼しい顔で答える隼人くんはさっきまでの可愛い顔じゃなくちゃんと男の子の顔をしている。真剣そうにまたバシバシとテーブルを叩いた。
隼人くんの言葉の後、水を打ったようにしーんと台所が一旦静まり返る。さすがにこの沈黙はきつい。お兄さん達、お顔が怖いよ。
