親と喧嘩したまま飛び出したものの、財布と携帯と化粧道具しか持ってきていないという、何ともまあ間抜けな有り様。



「はぁー…」



口から吐き出した溜め息が闇夜に包まれた春風に乗って消えていく。




だってさ、言い訳だけど自分のやりたい事じゃないのにやっても面白くないと思う。



自分のやりがいがある事をしたかったんだ。



だから自分のしたいこともないのに無理やり決めても絶対後悔すると思ってなかなか行動を起こせなかった。



そう思っていたら出遅れ組になってしまったのだけれど。実際これも良く良く考えればただの言い訳なんだよな。



「あ…桜だ」



考え事をしながらも、ふと頭上を見上げると大きな桜の木が風に揺れているのが目に映る。ピンク色の花弁が揺れるたびにチラチラと舞っていた。地面にピンク色の絨毯ができていく。



でも何だか夜の桜はやっぱり少し不気味に見えるな。揺れる様がまた少し気味が悪く見えゾクリ、寒さと悪寒を感じて肩を震わせた時だったーーー…。