「愛理ちゃんの部屋はここの部屋出て右の部屋な。好きに使ってええから」


「え、待って待って」


「あ、別の部屋がええ?どこでも好きに使ってええよー」


「違う違うそうじゃないです!あたし家出少女じゃありませんからお気になさらず」


「いやいやどう見たって家出少女?家出お姉さん?気とか使わんでええからさ。それに敬語もいらんで?俺の方が年下やしな。翼から年齢聞いとるから」



え、そうなの?翼はともかく凄く大人ぽいから年上か同い年くらいなのかと思っていた。



「あと自己紹介したんか知らんけど愛理ちゃんの隣のそいつは翼の双子の兄貴で空(そら)って言うねん。ほんまはもう1人いつも一緒におる奴が居るんやけど…まあまた今度会った時に紹介するから」


「ああ…はい……」


って違うでしょ!!



「あ!!!あの…」



肩に触れていた空の手を払い落とし勢い良く立ち上がる。流されてる流されてる。このままではいかん。テーブルへと両手を落とし口を開こうとしたあたしよりも先に。



「あーいりちゃん?もう夜も遅いし、こんな時間まで女の子一人で外ウロつかせんのは俺も心配やから泊まってって欲しいんやけどなあ?」



優がその言葉を阻止するように一本指をあたしの唇へと押し付けた。



裏があるようには思えない言い方だった。本心で本当に見ず知らずのあたしを心配してくれているような声色に言葉が出ない。加えて。



「言うこと聞いてくれないと、めっ、やからね」



そんな子供じみた事を言われついつい口元が緩む。