ふらりふらり、脱衣所の中へとやってきた空は自分の買い物袋を一旦床に落とすと、あたしが抱えていた中から冷えピタを取り出す。
置いてあったタオルを一枚水で濡らし、優しくあたしの頬を撫でるようにして血を拭いた。
「消毒するか?」
聞かれて、あたしは首を振る。大した事無い。きっと寝れば治るような傷だ。
「仕方ねえ、めんどくせえけど優しく貼ってさしあげましょうかね。いやーめんどくせえめんどくせえなあ」
「おい、やる気ねえな。そんなんだったら貼らなくて結構」
「嘘だよ嘘。優しく貼らせていただきます」
ぺりぺりと透明のシートを剥がすと言葉の通り本当に優しくあたしの頬にペトリと貼り付け、残ったシートをゴミ箱に丸めて捨てた。何だかなあー急に優しくされても困るのだが。
「空が優しいと裏がありそうで怖い」
「ひでえな。でもそうだな…ちょっと落ち込んでるのかもしれねえ」
「何で?」
「俺があの時、覚悟がどーのって言っただろ」
「覚悟…」
「お前に言っただろ。覚悟がねえならって…その言葉で今回1人で助けに言ったって言うなら俺に責任があるわけよ」
あたしは横から空の顔を凝視する。何のことだろうか。
空が言いたい事が良く分からない。