遅れてジンジンと痛みだした頬。呆気には取られたものの、そういう卑怯な相手だったと思い出す。あたしの後ろにはまだ走り出せずに居たらしい彼女さんが「――ひっ、」悲鳴を上げた声がした。
ダメじゃないか逃げなければ!
さすがにあたしも、自分の身とその子の身を守るのは難しい。一人なら逃げ出す事も可能かもしれないけど。
「おい…めんどくせえ事してくれたな。お前も俺らと遊んでくれるって事だよな?」
「絶対お断りだ」
「お前、癇に障る女だな」
「それそっくりそのままお返しするよ」
「そんな口叩けなくしてやるよ」
「何だとやる気か」
いかにも悪役めいた台詞を言ったものだから噛み付くようにズズイ、顔を近づけて睨みつけた瞬間だった。
凄まじい爆音が聞こえてきた。それもたくさんのだ。あたしも目の前の男達も驚いて目を見開いた。
何に気付いたのか、あたしの後方に視線を滑らせた黒髪の男が「おい」たった一言の指示を真後ろの男達に投げると慌てたようにあたしの目の前から逃げ出した。そそくさと。
何だと…まさか怖気…づいたのか?あたしに?
「なるほど…やっぱり怖気づいっ」
「何やってんだてめえ!!!」
「いだっ!!!」
両手を腰に滑らせ「はーっはっはっは」仰け反り笑ってやろうとしたところで真後ろから素早く頭の上にチョップを振り落とされた。しかも容赦ない。
