「馬鹿野郎!追いかけろ!あの女、殺してやる」
一瞬の間を置いて、指示が飛ぶ。後ろからは怒声と罵声、追ってくる足音が聞こえてくる。
裏道から元来た道に出た。大通りにでも出れば人がいるはずだ、それにもう少し行けばさっきのコンビニがある。
そこに飛び込んで助けを呼べばーーーーーー、だけど聞こえる怒声はすぐ近くまで追ってきていて、振り返れば男達はすぐそこまで迫っていた。これじゃダメだ。捕まる。
「行って!」
あたしの大声にビクリと肩を上げた彼女を先に引っ張り押しやる。
「ダメっ、です」
「このままじゃさっきみたいな怖い思いするよ!優達には連絡したからトシもきっと来てくれる。だから行って!」
「出来ない」
「出来るよ。あたしは大丈夫だから行って!あたしこれでもえーっと…えーっと、そう、空手全国大会ゆうしょ」
「嘘ですよね」
「バレたか…。しかし大丈夫だ!あたしにどーんと任せて君は行きたまえ!」
もう一度彼女の背中を叩く。さあ行きたまえと!それはヒーローアニメさながらなセリフだと思った。格好良いマスクとか仮面があればもっと決まったのに。
あたしは彼女に背を向けて追ってきている男達へと振り返る。誰よりも早く、怒りの形相のままあたしの目の前にたどり着いた黒髪の男が言葉も無いままにーーーーーーパンッ!鋭い音をさせあたしの頬を引っ叩いた。
これにはさすがに焦る。お前それは不意打ちって言うんだぞ!卑怯な!
