その前にとあたしは有無を言わさずツカツカと黒髪の方へと足を進め、距離を詰めた。



今はあたししかこの子を助けられない。優達は今どこに居るのか、聞き忘れてしまった。だから時間がどれくらいかかるのかも分からない。あたしがしっかりしなければ。



黒髪の横を通り過ぎる間際、一瞥だけをくれて5人の男達をドンっと手で突き飛ばした。



一瞬びっくりしてフラリと尻餅を着いた1人の間を擦りぬけるようにして片手を伸ばし、彼女の腕を掴む。無理矢理引っ張り立たせて片手で汚れを払いながらも。



「大丈夫?」


声をかけるとまだ震えが止まらないその子は小さく何度か頭を振った。最低だお前ら。こんな可愛い子に何してくれてるんだ。馬鹿じゃないのか本当に。




「お前、何のつもりだ。」


「何のつもりって何がだ」


「簡単に帰すわけねえだろ。てめえこそ、ただの友達ならそいつを置いて行け。痛い目にあいたくなかったらな」



黒髪の男が後ろから強い力であたしの肩を掴んだ。ぎゅうう、爪まで食い込むその痛みに顔をしかめる。



女に対する態度がまるでなってないやつだ。もっとソフトに扱え、これでもあたしはレディーだぞレディー。



「あんたこそ何のつもりだか知らないけど、女の子にこんな事するなんて最低だね。」


「あ?」


「それも寄ってたかって、意気地が無いにも程がある。」



この野郎め!あたしは振り返りざまに男の急所をスコーンと蹴り上げた。さすがに堪らない攻撃だったのか、男が膝を折って崩れ落ちる。



その脇を彼女の腕を引っ張り走り抜けた。