「その時南原のリーダーやってた奴は俺の一個上の奴で、まあ話しがそこそこ分かる奴やってん。やから俺が1人で来たんならそっちも1人でやるって言い出してさ」


「勝負は?」




あたしが立ち上がって優にずいっと顔を近づけると落ち着けと手を上下に動かされた。これは失敬。そそくさと定位置に腰を落とす。





一拍置くようにして間を取ると、優は一言。



「勝負はつかんかった」




肩をすくめて言った。


あたしがキョトンとした顔を向けると優は苦笑いをうかべてくる。



「どっちも負けず嫌いやったからなあー周りが止めに入るくらいまで続けとったわ。ほんでな南原のリーダーが『お前おもしろいね。今勝負つけるよりお前がほんとにリーダーになった時もう一回勝負してあげるよ。それまで一時休戦。東と西のバカ共をぶっつぶす』って提案してきてん」


「それでそれで?」


「南のリーダーが北原にその話しを一緒にしに言ってやるってついてきてな。俺と南のリーダーが一緒にボロボロで帰ってきた時のあいつらの顔、あれは傑作やったな」



優はわざと笑えるように話してくれてるんだとここになってやっと気づいた。あたしが少しでも怖がらないように。少しでも不安じゃなくなるように。


優はいつだって相手の気持ちを一番に考えてくれる。