「でもね、らしくない顔も知りたいんだよあたし。今まだ全然皆の事知れてないし、ほらそれにあたしの事もまだ全然知れてないでしょ!あたしが実は凄い子って事も」
「いやどこも凄い子じゃねえだろ。良く分かった。てめえが考えなしの無鉄砲女だって事は」
「おい失礼だな翼!あたしはちゃんと考えて行動する子だぞたぶんきっと」
「全く説得力ねえよ」
翼に噛み付くように一歩前に進み出る、けれど優があたしの頭をわしゃわしゃと撫でてそれを阻止すると。
「愛理ちゃん…お家帰ろうか」
そう言った。
付け加えるようにして言葉が続く。
「ちゃんと話すね、今の事も全部。ちゃんと。やからお家帰ろう?」
「…うん!」
「じゃあ俺達はそろそろまた別の場所に行こうかねえ」
「そうやな、後の事お前に任せてもええ?」
「いやあーめんどくせえから嫌なんだけどね、今回は仕方ねえからやってやるよ。タバコ1箱ね」
「空達は一緒に帰らないの?」
「俺達まだやる事あるんだ」
隼人くんが申し訳なさそうにあたしの濡れた髪を片耳へと指先でかける。「愛愛は早く帰りな、風邪ひいちゃうよ」心配そうにそう言うけど、あたしより隼人くんの方がずっとびしょ濡れで心配だ。
「そうなんだ、あたしとんだお邪魔虫だったね。何てタイミングの悪い」
「ほんとにな」
おい一言余計だぞ翼。その通りですけれども。
「じゃあな」
あたし達を置いて他の皆が路地裏をダラダラとやる気も無さそうに出て行く。その背中に片手を振って、大丈夫だろうかと見送ると心の中でも読み取ったのか。
「大丈夫やで」
優が優しい声色でそう言ってきた。
優が言うなら大丈夫なんだろう。それなら心配無さそう。
「それより愛理ちゃんほんまビショビショやな。」
「優もでしょ」
小突くようにして言うと、また優が少しだけおかしそうに微笑んだ。