雨は容赦なくあたしたちを叩きつける。ギュウっと優の服を掴んでいた手に力がこもった。じゃなきゃ優がまたあたしをすり抜けてしまいそうだから。
「優……」
揺さぶっていた手をふと止める。優は逃げ出さず、しっかりとあたしの前に立ったまま視線だけをあたしに落とした。ああ、また不安げな表情じゃないか。
「大丈夫だから話してくれ。」
暫くの無言、優の片手がするすると上がっていく。どこに向かうのかと思えば自分の顔を片手でぎゅっと押さえ、口元だけで笑ってみせた。
「今、顔見んといて。俺めっちゃ情けない顔しとるわ」
いつもの声だ。優しいあの声。
「愛理ちゃんの言う通りやった…俺愛理ちゃんがいなくなるんが怖くて言わなあかん事ずっと言えんかった。本当の俺らを知られたらきっと愛理ちゃんは居なくなるんちゃうかなって。」
「その気持ち、早く話してくれれば良かったのに」
「…俺の本当の姿見て怖かった?」
「びっくりした。だけど何か…らしくないなって。優は笑ってる方が似合うから」
あたしの言葉に優は目を丸く見開き、「ははっ、」すぐにおかしそうに笑う。そうそう、それの方がずっと優らしいとあたしは思う。