「なぁ、今日も指輪忘れたのか?」


朝の待ち合わせ場所。
いつもと同じように手を繋いだが、やしなの指には指輪の感触がなかった。

陸上記録会から1週間。
一度はずしたからやしなが指輪をしているところを見たことがない。


『カバンから出して忘れちゃった』


最初はそれでよかった。
でも毎日忘れてくるって
そんな大事じゃないのかな。
もしかして心移りしてんのかなとか思ってしまう。

あの祐樹の友達とか。


『先輩はかわいいですよ』


って彼氏の俺がいる前で言うもんだから
つい不機嫌なっちまって祐樹に笑われた。


「丈。ごめん」

突然やしなが俺の手を離す。

離された手に寂しさを覚える。


「ん?忘れたこと?んなきにすんなよ」


俺はやしなの頭をなでる。

別れ話じゃなきゃいいんだ。