「丈!!」


あたしは丈の制服をつかむ。


「なに?俺これから後輩の家に行くから忙しいんだけど」


丈が冷たく言い放つ。

寂しい。

さっき、あんな現場を見ちゃったから、だよね。
冷たくなるのも当たり前。

だから、あたしはへこたれない。


「歩きながらでいいから」


丈は歩いたままで返事はない。

でも。
聞いてくれてると思う。

丈は不器用だからね。
こういう時にどうしたらいいのかってわかってないんだよね。

丈のことは誰よりもあたしがわかってる。
もちろん。
絵里香さんよりもね。

そう信じたい。