恋愛白書

「行くなよ!」


神谷くんがあたしのカバンを引っ張る。


「神谷くん?」

「俺、こんな気持ちはじめてなんだよ…」


神谷くんが辛そうな顔になる。


「…そんな…」

「今まで、誰とでも適当に付き合ってきた俺がはじめて自分の。自分だけの女にしたい。そう思えたのが、やしななんだ」


神谷くんの顔が赤くなる。

そして続けて。


「だから、丈のこと追いかけてほしくない」

「…でも」

「今行かせちゃったら俺は失恋ってことになっちゃうだろ?そんなの俺のプライドがゆるさねぇよ」


神谷くんが切なそうに笑う。

あたしは笑えなかった。

ストレートな気持ちが十分伝わってきた。