翔は…………何て言ってた……?




───『そういう酷いとこ、ちょー好きっす!』



まるで言葉の意味を知っているような言い方だった。



ザワザワと騒がしく木々を揺らす風。


私の解かれた紅い髪を乱暴に流していく。




───『〝初めの雨さん〟に戻ったみたいでしたよ』



彼の言う〝初めの私〟って……何?




不確定な思考が色んな事と一緒に頭の中を渦巻いて気持ち悪い。



もし……帰れるのなら、私はどうするのだろう。



不思議な程力の込められた両手を開く。


帰らなければいけない気がしていた。



考えを飛ばすように、頭を左右に振る。



不確定なことで考えるのは無駄だ。



一度だけの深呼吸をしてから、ノアを起さないように寝床についた。