あたしはもうこの病院に定期的に来ることはない。


それを知った風は、寂しいだろうか?


膝の上でギュッと拳を握りしめて風の次の言葉を待つ。


その時間はたった数十秒ほどだったはずなのに、あたしには何分にも何時間にも感じられた。


沈黙が胸に突き刺さるようだった。


「おめでとう!!」


静かな部屋に風の元気が声が響き渡った。


その声に驚きあたしは一瞬息を飲む。


見ると、風は本当に嬉しそうな顔をしてあたしに拍手をしてくれていた。


あたしは茫然として風を見つめる。


ほとんどの時間を室内で生きて来たため、透けるように白い肌をしている風。


そしてその笑顔も、なんの裏もなく透き通ったものだった。


「すごいね千里。千里は自分の体に勝ったんだ!」


「風……」


目を輝かせて喜んでくれる風に、あたしは鼻の奥がツンッと痛くなった。


涙が出そうになり、窓の外の空を見る。