あたしは視線をチアキへ向ける。


チアキはチラリとあたしを見て、そして空を見上げた。


「どうせ明日になればまた忘れてる」


「どうしてそんなこと言うの?」


いくらなんでも、あたしの記憶力はそこまで悪くない。


特にチアキのような不思議な少女の事をたった1日で忘れてしまうなんて思えなかった。


「どうしても、あたしにはわかるから」


なにがわかるっていうの?


そう聞こうと思ったが、花火のあがる音にかき消されてしまった。


「何でもこうして花火を見たのに、千里は全部忘れてる」


その言葉にあたしは目を見開いた。


「なんで、あたしの名前を?」


あたしは少女に自己紹介をしていない。


あたしの名前は知らないはずだ。


「だから、千里は忘れてるんだよ。今日の花火のことだって、すぐ忘れる」


呆れたような口調でそう言われたので、あたしは少しムッとしてチアキを睨んだ。


「あたしはそんな簡単には忘れないよ」


そう言い、空へ視線を戻したのだった。