誰もその声に気が付いていないようで、ただ採寸の順番を待っている。


「ここだよ」


そう言われて手を掴まれえる感覚がして、あたしはハッと息を吸い込んだ。


見るとそこには小さな少女が立っていたのだ。


小学校低学年くらいだろうか?


赤いワンピースを着て、おさげ髪の女の子がジッとあたしの事を見ている。


けれどその子に見覚えなんてなくて、あたしはまたキョロキョロと周囲を見回した。


この子は誰かの妹さんなんだろう。


お姉ちゃんとはぐれてしまったのかもしれない。


「あたし、迷子じゃないからね?」


「え? あぁ、そうなんだ?」


心の読まれてしまったかのようで、一瞬たじろくあたし。


でも、迷子じゃないならなんなんだろう?


「あのさぁ、また守れなかったの?」


「へ?」


あたしは少女の言葉に首をかしげる。


「守れなかったって、なにが?」


そう聞くと、少女は眉間に眉を寄せて盛大なため息を吐き出した。


それこそ、体内の空気をすべて吐き出してしまうんじゃないかと思うくらい、盛大なため息を。


「あ~ぁ、またやり直し」


呆れたようにそう言った少女。


「やり直しって何が?」


そう聞いた時、少女はすでにどこにもいなかったのだった。